退職金のお得なもらい方は「一時金」と「年金」の併用!? 退職や転職時に役立つお金の知識

新型コロナウイルスの影響で希望退職を募るなどの雇用調整を行う企業が増えています。またリモートワークの普及によって自宅で自分と向き合う時間が増えたことで、自身や配偶者が転職を考えているという人もいるでしょう。

リモートワークしている女性

Ph/Getty Images

今回は、退職や転職のときに役立つ情報を、特定社会保険労務士の小泉正典さんの監修のもと紹介します。

→新型コロナの影響で収入が減った人を助ける制度はコチラ

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退職金の受け取り方と得するもらい方とは?

【質問】会社員の夫がまもなく定年退職を迎えることになったのですが、退職金の受け取り方には何種類かあるようです。おすすめの方法があれば教えてください。(63歳・主婦)

【回答】退職金の受け取り方は大きく分けて「一時金受取」、「年金受取」、「両者の併用」の3種類があります。退職金には所得税と住民税が課税されますが、どの方法を選ぶかによって、課税額が変わってきます。事前に受け取り方法を夫婦で話し合っておくことをおすすめします。

退職金イメージ画像

Ph/Getty Images

●一括で受け取る「一時金受取」とは

「一時金受取」とは、退職金を定年、あるいは中途退職時に一括で受け取る方法です。この場合、退職所得控除という税制の優遇措置を受けることができ、課税の対象となる所得額から一定額が差し引かれます。メリットは、継続年数が長ければ長いほど所得控除額が高くなること。退職所得控除額の計算は以下の通りです。

・勤続年数20年以下なら、40万円×勤続年数
・勤続年数20年を超えていれば、70万円×(勤続年数-20年)+800万円

一括で受け取る退職金から控除額を引いた金額の2分の1に対して、課税されます。

●お得なのは、分割で受け取る「年金受取」との併用

年金として受け取る「年金受取」では、公的年金等控除を受けられます。具体的には、国民年金や厚生年金などの公的年金と合算して年間70万円まで非課税となります。まだ受け取っていない退職金については、企業で運用されるので、受取総額を増やせる可能性があるのもメリットです。ただし受取総額に関しては、企業の業績悪化などで支給額が減る可能性があることを覚えておいてください。

長く勤務されている場合は、一時金受取を選べば税制面でかなり優遇されるでしょう。一時金受取をした際に課税対象となる分を年金受取に回せば、さらに税金の負担を減らすことができます。企業によって制度は異なりますので、まずは自身や配偶者の勤める会社の制度を確認してみてください。

【ポイント】

・一時金受取は、退職時に「退職所得の受給に関する申告書」を提出しないと税金が源泉徴収されます。払い過ぎてしまった場合は、確定申告をすれば還付されます。

・年金受取は、勤めていた企業の業績悪化等で将来の支給額が減る可能性もあります。

・公務員の場合、一時金受取のみとなります。

働く人を助ける「雇用保険」のお得な制度

【質問】「雇用保険」とはそもそもどのような制度で、いつ利用できるのでしょうか。(45歳・会社員)

【回答】雇用保険は、労働者の生活や雇用の安定を図ったり、失業時に利用できる失業給付を支給したりするなど、雇用に関する総合的な支援を目的にしている保険です。失業や育児、介護による休業など、いざというときの助けになります。

失業保険申請書

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●すべての社員が加入する「雇用保険」

雇用保険は原則としてすべての企業に適用され、働くすべての一般社員は雇用保険への加入が義務づけられています。たとえ試用期間であっても、雇用契約があり給与が支払われている場合は対象となります。(ただし、週20時間以下の契約で働く場合等は適用外です)

もっともよく知られているのは、「失業給付」でしょう。被保険者がリストラや自己都合などで離職した場合、ハローワークに申請することによって、再就職までの生活を支える手当が支給される制度です。

支給額や期間は、就業時の給与・期間・離職理由などによって決定されます。基本的には、働いていた期間が長ければ支給期間も長くなり、働いていたときの給与額が高ければ支給額も高くなると考えてください。

→雇用保険制度 |厚生労働省

●育児や介護で使える「育児休業給付」「介護休業給付」

育児休業中に給与が一定以上支払われなくなったときは、「育児休業給付」を受け取ることができます。雇用保険に入っていて、育児休業開始前の2年間に11日以上働いた月が12か月以上あることが条件となります。

基本的には子供が1歳になるまで支給され、休業から6か月間は、賃金日額の67%、半年後からは賃金日額の50%を受け取ることができます。保育所等に入所できなかったなどの場合は最大2歳となる日まで受給できますが、延長申請が必要です。

家族の介護をするために休職し、給与が一定以上支払われないときは、「介護休業給付」を受け取ることができます。介護される要介護者は、「2週間以上の期間にわたり常時介護を必要とする状態」であればよく、要介護認定を受けている必要はありません。支払われる金額は賃金日額の67%(93日が上限)となります。

【ポイント】

・雇用保険に関する手続きは、すべてハローワークが窓口となります。

・「育児休業給付」は、男性でも育児休業を取得すれば受け取ることができます。

・「介護休業給付」の対象となる家族は、配偶者・父母および子・祖父母・きょうだい・孫・配偶者の両親です。

→Q&A~育児休業給付~ – 厚生労働省

→Q&A~介護休業給付~ – 厚生労働省

働きながらスキルアップするなら「教育訓練給付」を活用

【質問】今の仕事を一生続けるのは難しいと思うのですが、かといってすぐに辞めると収入がなくなってしまいます。働きながらスキルアップをするにはどうすればいいでしょうか。(42歳・会社員)

【回答】スキルアップや資格支援のためにかかる費用を、国が支援する「教育訓練給付制度」があります。

PC作業している女性

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●スキルアップしたい…「教育訓練給付制度」を活用しよう

「教育訓練給付制度」とは、厚生労働大臣に指定された教育訓練講座を受講すると、その一部が助成されるというものです。教育訓練給付金をもらうには、雇用保険の加入期間が通算3年以上、初めて利用する場合は1年以上(専門実践教育訓練給付金は2年以上)であることが条件です。失業者が利用するイメージがありますが、企業に勤めている人も利用することができます。

給付の種類は大きく分けて2種類。通信講座なども受講できる「一般教育訓練給付」と、より専門的な資格を目指す講座が対象となる「専門実践教育訓練給付」があります。具体的には、看護師・美容師・調理師・保育士・社会福祉士などの資格が対象となっています。

さらに、2019年10月には、「特定一般教育訓練給付金」が新設されました。こちらは、税理士・社会保険労務士・介護職員初任者研修などが対象となり、事前にハローワークで就業相談をする「キャリアコンサルティング」の受講が必要です。

●「教育訓練給付制度」でもらえる金額

「一般教育訓練給付金」は、受講のために支払った費用の20%が支給されます。上限10万円で、1回支給されると、その後雇用保険の加入期間が3年以上にならないと支給されません。

「専門実践教育訓練給付金」は、支払った費用の50%が支給され、上限は年間40万円です。「特定一般教育訓練給付金」は、支払った費用の40%が支給され、上限は年間20万円です。いずれも4000円を超えない場合は支給されません。

【ポイント】

・教育訓練給付の対象となる講座はたくさんあり、失業者だけでなく在職者も受給することができます。

・受給資格の有無や、給付対象となる講座を知りたいときは、ハローワークか、講座を開いているスクールで確認してください。

・離職者の場合、離職の日の翌日以降、受講開始までの期間が1年以内の人に限られます。

このように、知っておくと役立つ知識や制度はたくさんあります。詳細についてはハローワークなどに相談に行ってみてください。

※手続き内容をわかりやすくお伝えするため、ポイントを絞り編集しています。一部説明を簡略化している点についてはご了承ください。また、令和3年1月25日時点での内容となっています。

→教育訓練給付制度 |厚生労働省

監修:特定社会保険労務士・小泉正典さん

小泉さん

こいずみ・まさのり。特定社会保険労務士。1971年生まれ、栃木県出身。明星大学人文学部経済学科卒。社会保険労務士 小泉事務所 代表、一般社団法人SRアップ21理事長・東京会会長。専門分野は労働・社会保険制度全般および、社員がイキイキと働きやすい職場作りのコンサルティング。監修書に『社会保障一覧表』(アントレックス)、『「届け出」だけでお金がもらえる制度一覧』(三笠書房)など。セミナーや講演も多数行う。https://koizumi-office.jp/

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