危険なダイエット注射|高濃度ステロイドに不妊症、糖尿病など重篤な副作用リスク!

広告塔の有名タレントやモデルがくびれたウエストを強調、「やせる!」と宣伝された痩身注射が話題だが、その成分やメカニズムを知っているだろうか。一部には、施術に必要な説明が充分でないまま、副作用に苦しめられる実態がある。

痩身注射の危険性

女性のウエスト部分に注射をしている

写真/ピクスタ

浜の真砂は尽きるとも、世にダイエットの悩みは尽きまじ──食事と運動こそが常道だとわかっていても、楽してやせたい。そんなニーズをくみ取って市場を拡大しているのが「痩身注射」だ。

一口に痩身注射といっても、いくつか種類がある。最もメジャーなのは「脂肪溶解注射」だ。千葉中央美容形成クリニック院長の西谷直輝さんが解説する。

「大豆由来の成分『フォスファチジルコリン』を皮下の脂肪層に注射すると、脂肪細胞の膜が壊れて脂肪が尿などで排出されてやせるというメカニズムです」

◆痩身注射は自由診療

痩身注射は保険のきかない自由診療。とはいえ、医師の責任のもと患者はメリット、デメリットをよく理解して施術を受けなければならない。

ところが、一部の痩身注射では顧客に副作用のリスクを詳しく説明せずに施されている実態が浮かび上がってきた。

痩身注射はなぜ危険か?ステロイド使用の例も

メジャーでお腹周りを計測している女性のお腹

写真/アフロ

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ある美容クリニックのホームページを見ると、その痩身注射が先進的かつ確実な効果が得られるように錯覚させられる。ただ、ホームページのどこを見ても、「独自開発」などと書かれているだけで、その注射の成分は記されていない。

東京や名古屋、大阪の複数のクリニックで大々的に宣伝されて行われているこの痩身注射について、実際に施術していたクリニック「A」の元幹部がこう明かす。

「『A』の痩身注射は、脂肪溶解注射のデメリットである腫れや痛みもなく、翌日には1㎏ほど体重が落ちるため、『すぐやせる』という口コミが広まりました。『彼氏のためにやせたい』という20代前半から、『リバウンドを繰り返してしまう』という30代後半まで幅広い世代に施術していた。ただ『A』では患者に注射の内容成分は伝えていなかった。なぜなら『ステロイド』が含まれていたからです」

◆ステロイドとは?どんな作用が…?

ステロイドとは副腎皮質という器官から分泌されるホルモンの1つで、アレルギー反応を抑えるなどの作用がある。

クリニック「A」では、ステロイド剤(商品名・ケナコルトA)をほかの薬剤と混ぜ、「オリジナル痩身注射」と銘打ち、1回分20mlを2万5000円ほどで販売。それをやせたい部位20か所に分けて注射する。週1回のペースで合計12回の施術が基本のコースだという。

「20mlのうちステロイドの量は約7mgで、そのほかの成分は生理食塩水と麻酔薬、喘息薬です。それを12回打つと、約84mgと高濃度のステロイドが体内に取り込まれることになります。この量は、花粉症治療で使用されるステロイド量の約2倍です。患者の中には一年中この注射を打ち続ける人もいました」(「A」の元幹部)

「A」でステロイドを使用した痩身注射を始めたのは5年ほど前だという。

「もともとステロイドを使ったダイエット注射は、韓国の美容業界で開発されたものだそうです。その注射の“レシピ”が日本に持ち込まれ、じわじわと広がっているのです」(前出・美容外科医)

”ステロイド注射”で本当に痩せるのか?

体重計に乗る女性

写真/Getty Images

あるクリニックで、ステロイドを使った痩身注射を受けた20代女性が語る。

「脂肪を溶かして体重を減らす脂肪溶解注射だと説明を受けました」

注射には脂肪を融解する成分が入っていないので、この説明はウソ。この痩身注射は、内容成分は同じなのにクリニックによって“効き方”の説明がバラバラなのが特徴的だ。

クリニック「B」は本誌・女性セブンの取材に対し、「注射に『代謝を上げる成分』が入っている。それが副作用で炎症を起こすので、緩和するためにステロイドを使用している」と説明する。

◆ステロイドで痩せるエビデンスはない

前出の美容外科医の指摘。

「ステロイドを服用すると、顔が張った状態(ムーンフェイス)になったり、食欲が増進したりして、逆に太るはずです。『ステロイドでやせる』というエビデンス(科学的根拠)はありません。混ぜて使っている喘息薬には、たしかに利尿作用があるが、“やせる効果”はありません」

それではなぜこの痩身注射が広まっているのか。

「そもそも韓国の開発者でさえ“なぜこの注射でやせるのか”はよくわかっていないそうです。多くの顧客に試した結果、『なぜか効果がある』ということで、エビデンスのないまま提供しているのです」(前出・美容外科医)

前述のように、日本医師会は糖尿病薬を、本来の目的ではない「やせ薬」として使用することに警鐘を鳴らした。この痩身注射も同じではないだろうか。

重篤な副作用のリスク

同意書のコピー

施術前にサインする同意書。クリニックによって違うが、成分や副作用の説明が不充分なものも見受けられた。

気になるのは、多量にステロイドを体内に入れると、副作用のリスクが高まること。痩身注射に使われるステロイド剤は、擦り傷、火傷、ケロイドなどの炎症を抑えるほか、アトピー性皮膚炎、リウマチの治療薬としても使われる。幅広い使用用途がある半面、重篤な副作用を引き起こす可能性がある。

「まず挙げられるのは不正出血です。比較的頻繁に起こるので、ケナコルトAを一度でも使用する場合は、リスクをきちんと説明するべきでしょう。投与量や投与期間にもよりますが、不正出血が続けば、不妊症の原因にもなり得ます。また、免疫力が低下するので感染症にかかりやすくなる。さらに、長期投与をすると、糖尿病や、骨粗しょう症になるリスクを高めます」(西谷さん)

◆不正出血を訴える患者が多い

実際、副作用を訴える声は少なくなかったという。「A」の元幹部は、「不正出血の訴えがとにかく多かった。そのためクリニックで産婦人科医と提携。そこでピルを処方していた。それにより、不正出血の原因がステロイドだとわかりにくくしていた」と語る。

注射を受けた人はそうしたリスクを正しく理解していただろうか。前出の20代女性は「主な成分がステロイドだとは伝えられなかった」と言う。

◆同意書に成分の記載がないクリニックも

クリニック「A」で治療前に患者がサインする「同意書」には、「トリアムシノロンアセトニドが主成分」という一文があるが、それがステロイドだとは一般の人にはわからない。別のクリニック「C」の同意書には、そもそも成分の記載がなかった。

「副作用やリスクが0%という薬はありません。だからこそ、自由診療で適用外使用が多い美容クリニックでは、被施術者が納得してトラブルを避けるためにも、ことさら丁寧にリスクを説明した方がいい。また、ステロイドに対しては心理的な抵抗が強い患者が多いので、もし使っている場合は同意書に明記すべきです」(西谷さん)

いくつかのクリニックは本誌・女性セブンの取材に、「施術時にステロイド使用と副作用を十全に伝えている」「同意書にも明記している」と説明した。また、「現在痩身注射の施術は行っておらず、ホームページから削除中」というクリニックもあった。

やせるために、どこまでリスクをとるのか。自分の身を守るのは、自分しかいない。

※女性セブン2020年7月23日号

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