ピルの種類一覧と効果とは?生理痛や子宮内膜症などの予防や治療にも有効

「現役女子高生 ピル飲んでます」というツイートが、この夏、話題になった。保健の授業での教師の発言に傷ついた経験を書き込んだもので、5月15日の発信以来、8月時点でリツイートは6万2000件超、「いいね」も9万8000件強に達した。ピルユーザーが本気で訴えたい“現実”とは──。

片手に水の入ったグラスを持ち、ピルを飲もうとする女性の口元画像

誤解されがちなピル。ユーザーが本気で訴えたい現実とは?(写真/アフロ)

ピルとは?服用する理由とは?

ピルは、1960年にアメリカで経口避妊薬として開発され、今や世界中で広く使われている。

「日本の場合、避妊法というとコンドームの利用者が多いですが、避妊に失敗する確率を比べると、コンドームの使用時が18%あるのに対し、ピルをきちんとのめば0.3%。ピルはかなり優れた避妊法です」

と言うのは、赤羽駅前女性クリニック院長で産婦人科専門医の深沢瞳子さん。

「ですが昨今、避妊以外の目的でピルが処方されていることは世間的にはあまり知られていません。ピルは今や、月経前症候群や生理痛など、生理に関連した諸症状、子宮内膜症などの治療や予防に使われているのです」(深沢さん・以下同)

実際、女性を対象にした調査でピルに対するイメージを聞いたところ、「避妊できる」が最も多かったものの、使用し始めたきっかけでは「生理痛を軽減したい」などの生理に関する不調改善や、婦人科系疾患の治療目的が半数を超え、避妊目的は2割強だった(下の表参照)。

ピルにまつわるアンケート調査結果画像

女性のカラダとココロの健康情報サイト『ルナルナ』による「低用量ピルについて」の調査(2014年2月、『ルナルナ』サイト内にて会員2436名に実施)

「子宮内膜症の治療目的でピルを処方され、調剤薬局で購入しようとした大学生が、職業欄を未記入にしたところ、薬剤師から『性風俗で働いているのか』と聞かれ、泣いて帰ったという話があります。薬剤師でもピルに対する知識がその程度とは、悲しい現実です。ピルは女性の体を守り、生活改善のためにも有効な薬だと、声を大にして訴えたいです」

噂レベルの話に惑わされず、正しい知識を得よう。

上の表に見られるように、ピルに対する偏見や思い込みは現存する。そしてまた、そのピルが医師によって処方され、少なからぬ数の女性が、避妊目的以外で使用しているのも事実だ。

避妊以外のピルの効果とは?

では、ピルが避妊以外で使用されるようになったのはなぜか。それは、女性のライフスタイルの変化と大きな関係がある。

かつてと今、女性の初経から出産までライフスタイルの変化イラスト

かつてと今、女性のライフスタイルの変化

昭和初期までの女性と現代の女性を比べると、現代の女性は初経を迎える年齢が早まっているのに対し、初産年齢が遅くなっている。出産人数も、以前は5~8人だったのに対し、現代は0~2人程度だ。深沢さんが言う。

「一生のうちの生理の回数を比べても、かつて約50回だったのが約450回と、実に9倍の差があります。この差が女性の体に大きな負担をもたらすこととなりました。妊娠から授乳期間中の約2年間は生理と排卵がありません。この期間は貴重で、かつての女性はそれによって子宮と卵巣を休ませることができました。しかし、現代の女性は妊娠・出産の機会が遅れたり減ったりして、生理の回数が増えました。ここ40年ほどで、子宮筋腫・子宮内膜症・月経前症候群・子宮体がん・乳がん・卵巣がんなどの婦人科系疾患が約30倍も増えましたが、それは生理と排卵の回数が激増し、子宮や卵巣が休めなくなったことと無関係ではないのです」

ライフスタイルが激変し、体への負担が増し、婦人科系疾患に罹る可能性が増えてしまった状態を改善すべく利用されているのがピルなのだ。

ピルには、卵巣から分泌される卵胞ホルモン「エストロゲン」と、黄体ホルモン「プロゲステロン」が含まれていて、生理サイクルに大きな影響を与える。

「それらのホルモンが含まれたピルを経口補充することによって体内の過剰なホルモン分泌を抑え、排卵が起こらないようにするのが避妊効果を得るメカニズムですが、生理をコントロールできるこうした効果が婦人科疾患の予防や治療にも効果を発揮するのです」

排卵・生理のたびに体内で起きていることは?

排卵・生理のたびに、女性の体内でどんなことが起きているのかあらためて見てみよう。

(1)排卵

卵巣から卵子が排出されることを「排卵」というが、この時、卵巣壁が毎回破れる。

「破れた卵巣が修復される時に卵巣がんが発生する可能性があります。つまり、排卵回数が多いほど、卵巣がんのリスクは高くなる。また、排卵を誘発するために爆発的に増えるエストロゲンが、子宮筋腫や子宮内膜症、乳がん、子宮体がんのリスクになるともいわれています。出産のために必要な排卵ですが、実は体にとってはあまり好ましくない現象なのです」

(2)生理

排卵の後、受精できなかった卵子はそのまま消滅する。そして、受精卵を受け入れられなかった子宮内膜が剝がれ、血液とともに腟に下りてくる。これが「生理」だ。

(3)生理痛

生理時に剝がれ落ちた子宮内膜と血液が腟にスムーズに流れ出ない時、子宮を強く収縮させて流そうとするが、この時、痛みが生じる。またこの収縮により、血液が卵管に逆流し、卵巣や子宮の周りに付着してチョコレート嚢腫や、子宮腺筋症といった子宮内膜症の原因になる。

●月経が起きる仕組みを解説

月経が起きるしくみ図解

最近は小学3~4年生で初経を迎える子もおり、子宮が未成熟で、生理の血液を腟にうまく流せず、逆流が起きやすくなる。

生理のたびに少量の逆流を繰り返し、付着が積み重なって癒着してしまうと子宮の動きが悪くなり、生理のたびにさらに強い収縮が必要となるため、生理痛もひどくなり、子宮内膜症などの疾患が悪化するという悪循環が生じる。

「今の若い子たちに子宮内膜症が増えているのも、初経が早く、生理回数が劇的に増えているのが原因です。『ピルを使って生理をコントロールするのは自然に反する』という声もありますが、人類の歴史上では、昔の9倍もの生理回数がある現代の方が不自然です。とはいえ、10代後半から妊娠や授乳を繰り返して子宮と卵管を休ませるのは、現代では難しい。それなら、薬を使って休憩させる方法を選択してもいいと思うのです」

ピルを服用すると、ホルモンの変動が緩やかになり、排卵は休止される。子宮の内膜が薄くなり、生理時の血液も少なくなるので弱い収縮でも血液が腟にスムーズに流れるようになり、生理痛が治まる。卵管へと逆流する血液量も減るため子宮内膜症の発症予防にもなる、と深沢さんは言う。

ピルの種類と名前を一覧で紹介

ピルの種類、内容を解説した図表

ひと言でピルといっても、生理日を移動させるためのピルと、避妊のためのピル、婦人科系疾患の治療のためのピルは、まったくの別物だ。

「風邪薬を選ぶ時に、発熱・せき・のどの痛みなど症状によって選ぶ薬は変わりますが、ピルも同様で、症状や目的によって選ぶピルは異なります。一般的にはエストロゲンの量に応じて、高用量ピルから超低用量ピルまで、4段階に分けられています。これに合わせるプロゲステロンの分量や種類によって、効果や副作用が違ってきます。避妊や生理日を移動させるためのピルには保険が利きませんが、生理痛や子宮内膜症などの治療目的で使うピルには保険が適用されます。ジェネリックもあり、料金は毎月2000円前後です」

服用中の医師「副作用もある」

現在40才の深沢さんは、妊娠中、授乳中以外はずっとピルを服用している。

「私の場合、ひどい生理痛などの症状はありませんでしたが、ピルについて勉強した結果、生理によるダメージから体を守ることができるので、のみ続けることにしました。ただ、薬ですから当然副作用はあります。処方薬ですから婦人科の専門医の診察を受け、自分に合うピルが見つかるまで、医師に相談しながら数種類試してみるといいでしょう。私も7種類くらい試して、今は年に4回ほど生理を起こすタイプのピルに落ち着きました。また、副作用のリスクを考え、定期的に血液検査やがん検診を行うことも大切です」

ピルをのまないほうがいい人

ではピルは、希望すれば誰でものめるのだろうか?

「生理のない人はのめません。日本産科婦人科学会のガイドラインでは、50才以上の人は禁忌(使用不可)、40才以上は慎重投与となっています」

ほかにも次のような人はピルNGだという。

●たばこを吸う人(1日15本以上)
●50才以上の人
●肥満の人
●高血圧、糖尿病などの疾患者

このほか、手術の前後、重症の高血圧、血管障害を伴う糖尿病、腎疾患などがあれば使用は認められていない。 生理痛はがまんするものではない。生理前の気分の落ち込みやイライラなど、精神的な症状にもピルは効果が高い。保険適用外だがニキビ治療にも使われ、肌がきれいになったと喜ぶ人もいるという。ピルによって、生活の質が変わるかもしれない。

教えてくれたのはこの人:赤羽駅前女性クリニック院長・深沢瞳子さん

赤羽駅前女性クリニック院長 深沢瞳子さん

産婦人科専門医、腹腔鏡技術認定医、女性ヘルスケア専門医。クリニックには、ピル専門外来もある。

イラスト/あらいぴろよ

※女性セブン2019年9月19日号

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